くも膜下出血になったら » くも膜下出血の後遺症 » 【特集2】くも膜下出血後のリハビリをされている方へ

くも膜下出血の後遺症に悩む方
リハビリをされている方へ

くも膜下出血の後遺症は、発症した箇所や重症度によって違ってきます。後遺症にはどのようなものがあるのが、後遺症から回復するためにどんなリハビリを行えばよいのか、どのような点に注意すれば回復を早められるのか、後遺症の種類別にわかりやすく説明していきます。

特集2
運動障害・感覚障害とリハビリ

運動障害・感覚障害とリハビリ

体のコントロールがうまくいかない「運動障害」「感覚障害」

「運動障害」とは、腕や足、ときには四肢すべてを自由に動かせなくなることです。これに伴い、のども正常に働かなくなったとき、「言語障害」「嚥下(えんげ)障害」「排尿障害」が起こることがあります。これまで普通にできていたことができなくなることから、患者さん自身のQOL(生活の質)を低下させるため、相当のストレスとなります。
それに加え、特定の部位にしびれや麻痺が残る「感覚障害」を併発することがあります。これは運動障害が解消されるにつれ、同時に治ることもあります。しかしながら、それまでの間は、けがややけどをしたことに気づかないといった二次的なトラブルも考えられます。

注意点・リハビリ方法

急性期を抜けたらスピーディーにリハビリを開始

安静にしなければならない急性期を抜けたら、すぐにリハビリにはいります。寝たきりであった期間中に筋力が落ちてしまっているからです。ベッドで上半身を起こすことからはじめ、四肢を動かすこと、首周りや舌を動かすことなど、「体の動き」に必要なリハビリを開始し、段階に応じた訓練をすることで、発症前の生活に戻れることを目指します。

 

 

感情障害とリハビリ

感情面に残る障害、「うつ症状」や「せん妄」に対処

感情をコントロールする前頭葉がダメージを受けた場合、うつ症状や、思考力低下を招くせん妄が起きるケースがあります。脳の一部が壊死してしまい、ときに脳血管性認知症が現れることもあります。気持ちがダウンし、考えがまとまらないということから、密かに自死を考えていることもありますので注意が必要です。
ときによって症状の出方が異なるため、主治医を中心に各専門家が連携を取りながらリハビリが開始されます。リハビリの目的を本人・介護者に説明した上、訓練を受けられる施設や相談窓口を教えてもらえます。似た境遇にある人たちとの交流から、リハビリに立ち向かう勇気を得られることもあるでしょう。

注意点とリハビリ方法

患者への寄り添いの心と、専門家への信頼

うつ症状やせん妄に対しては、心理カウンセラーとの面談や投薬といった措置が取られることがあります。しかしながら、常に接している介護者が患者自身の「今までどおりでなくなった」というショックに寄り添うことが、何よりの安心材料になることは間違いありません。

 

 

高次脳機能障害とリハビリ

高次脳機能障害とリハビリ

「人として」の理性やマナーを欠くこともある障害

高次脳機能障害とは、「記憶障害」「遂行機能障害」「社会的行動障害」を指します。
過去の記憶・これから行わなければならないことを忘れる記憶障害は、仕事や人間関係に深い影を落とします。
遂行機能障害は、これから行うべきことを多角的に見ることができなくなったため、仕事の手が止まったり、ときに意欲そのものがそがれることもあります。
社会的行動障害は、人が普段理性で押さえ込んでいる欲求をあらわにしてしまうことです。特定のモノや事柄への欲求を隠すことができなくなるため、人間関係がうまくいかなくなることも多々あり、社会復帰に関して大きなハードルとなってしまうことがあります。

注意点・リハビリ方法

症状にあわせ、少しずつ気長にリハビリを

記憶障害には、些細なことをちょっとずつ繰り返し覚える反復訓練、イメージ(画像)で記憶をサポートする内的記憶戦略法、家事など行うべきことをリスト化する環境調整するといった手法でリハビリに取り組みます。

注意障害なら、短時間で行えるゲーム性の高い訓練も採用されます。

社会的行動障害は、問題行動が起きるきっかけをみつけ、それにどう対処するかのリハビリを行います。

 

 

 

 

くも膜下出血後遺症・リハビリの目的

くも膜下出血を発症した場合、その症状の程度に関わらず、また予後の状態予測に関わらず、可能な限り一刻も早いリハビリの開始が理想とされています。
リハビリの具体的な目的は4種類。失われつつある機能を取り戻すための「機能回復リハビリ」、残された機能を最大限に活用するための「代償的リハビリ」、安静による心身の弊害を防ぐための「予防的リハビリ」、回復した機能を長期的に維持していくための「機能的リハビリ」です。
またリハビリは、実施の時期によって3種類に分類されます。くも膜下出血を発症してから数週間ほど行なわれる「急性期リハビリ」、同じく発症してから1ヶ月後~半年後ほどに行なわれる「回復期リハビリ」、および発症から半年後以降に行なわれる「維持期リハビリ」です。
リハビリに直接携わる医療従事者は、身体の基本動作を担当する理学療法士、日常の応用的な動作を担当する作業療法士、発話機能や嚥下機能を担当する言語聴覚士が中心。他、臨床心理士やケアマネージャーなど、多くの関係者とのチーム医療によってリハビリが進められていきます。

急性期のリハビリ

くも膜下出血を発症して間もない時期、つまり急性期においては、患者の容体はまだ不安定です。その一方で、リハビリを早期に行なえば行なうほど予後が良いという実情もあります。このジレンマの中で行なわれるのが、急性期のリハビリです。
急性期のリハビリの最大の目的は、廃用症候群を防ぐことです。廃用症候群とは、安静状態が長く続くがために生じる身体機能の低下のこと。ベッド上における正しい姿勢を維持することや、定期的に体位変換をすることなどを基本に置き、患者の状態に応じて手足を動かしたり、ベッド上に座ったり、ベッドから起き上がったりなどの訓練をしていきます。
これら急性期のリハビリの中でも、特に重要なものが手足のリハビリ。手足を動かさない状態が長く続くと、拘縮(こうしゅく)という状態を招く恐れがあるからです。
拘縮とは、関節や筋肉が固まってしまい動かしにくくなる状態。理学療法士や看護師は、急性期の患者のベッドサイドで、患者の指の関節を開いたり手にマッサージを施したりなどし、日々、拘縮予防のリハビリを進めています。

回復期のリハビリ

急性期のリハビリが終わると、通常は回復期病棟やリハビリ専門病院等に転院して回復期のリハビリが行われます。回復期のリハビリの目的は、急性期と同様に身体の基本動作の回復・維持、およびADL(日常生活動作)の改善です。
急性期におけるリハビリの中心はベッド上での基本的な姿勢の維持や、拘縮の予防でしたが、回復期に入るとより高度な動作を対象としたリハビリが行われます。具体的には、ベッドから立ち上がる練習や、歩行の練習などです。もちろん患者さんによって後遺症のレベルは異なるため、安全性を最優先しつつ、各患者さんの状態に応じたリハビリが行われることになります。
また、並行して行われるADL(日常生活動作)のリハビリにおいては、食事、着替え、トイレ、歯磨き、髭剃りなど、日常生活に必要となる手指の訓練が中心となります。あわせて言語聴覚士による言語障害・嚥下障害の回復を目指したリハビリも、本格的に行なわれるようになります。

維持期のリハビリ

回復期のリハビリを終えると退院になります。自宅に戻る患者さんもいれば、施設に入居する患者さんもいますが、戻り先がどこであれ維持期の適切なリハビリは実施されることになります。
維持期のリハビリの目標は、これまでに回復した機能の維持および向上。また立ち上がりや歩行が困難な患者さんについては、寝たきりにならないよう導くことも維持期リハビリの重要な目的になります。
患者さんの機能回復の状態がどの程度であれ、「本人ができることは本人にやらせる」が維持期リハビリの基本姿勢。本人を不憫に思えたり、または全体の時間の効率などを考えたりなどし、家族はつい本人に手を貸しがちになりますが、我慢して本人を見守ります。その姿勢こそ、患者さんの予後のQOL(生活の質)を高めることにもつながり、かつ家族の負担の軽減にもつながるからです。
また維持期に入った患者さんは、一日の大半を自宅や施設で暮らすことになりますが、時には一緒に外出することも大事。心身に外部からの刺激を与えることは、維持期の患者さんにとって効果的なリハビリとなるのです。

住環境の整備

退院して本人が自宅に戻る場合には、本人の維持期リハビリ、および日常生活に支障のないよう住環境を整備しておかなければなりません。本人の状態によっては大掛かりなリフォームが必要になる場合もあるため、住環境の整備は早めに進めておきましょう。本人が自宅に戻った当日には、基本的なリフォームを済ませておくのが理想です。
住環境の整備に着手する際には、「玄関・敷居・扉」「廊下・階段・床」「トイレ」「浴室」の4つの側面から現状を見直します。玄関からフロアにあがる際、通常は段差があります。スロープを設置するなどして、本人がフロアに上がりやすいようにしてください。廊下にはモノを置かないこと。廊下に限らず、本人の導線になりうる場所には、転倒防止の観点から絶対にモノを置いてはいけません。電気コードも壁に貼り付けるなどし、本人が移動ちゅうにつまづく要素を一切排除します。トイレは、もちろん洋式にしてください。本人が座ったときの高さを考慮した便器を新設し、壁には手すりを付けておいたほうが良いでしょう。その他にも、本人の状態に合わせて適切なリフォームを追加してください。

起き上がり・立ち上がり・着替えの基本動作

リハビリと言えば、理学療法士や作業療法士による専門的なリハビリをイメージしますが、維持期のリハビリにおいては、起き上がり・立ち上がり・着替えなどの日常的な動作も立派なリハビリとなります。毎日これらの基本動作を繰り返すことが、関節や筋肉の拘縮を予防し、なおかつ筋力アップにもつながって全身の健康状態を維持・向上させることへと貢献。安全性を最優先し、まずは家族が手を差し伸べる形で練習をスタートしましょう。
起き上がりをする際には、麻痺のない側を上手に利用します。ベッドの柵を握り、体を回転させるようにして起き上がる練習をしてみてください。立ち上がりは、ベッドサイドにまっすぐ座れるようになることが前提。座った状態で深くお辞儀をする姿勢を取り、体重を前方に移動させるようにして立ち上がります。また半身に麻痺が残っていない状態であれば、練習次第で着替えも自分で上手にできるようになります。コツを覚えてスムーズに着替えられるようになりましょう。

退院後の関節リハビリの基本

くも膜下出血で半身麻痺が残った場合、麻痺を起こした側の体は、もちろんほとんど自力では動かすことができません。ただし、動かすことができないからという理由で放置していると、やがて麻痺側の関節や筋肉が拘縮し、全身的な筋力の低下にもつながっていきます。全身的な筋力が低下すれば、血行不良などを招いて健康状態にも影響を与えかねません。麻痺側の拘縮を進行させないよう、毎日継続的に関節リハビリを行なうことが大切です。
関節リハビリの対象部位は、肩、ひじ、手首、手の指、足首、足の指、股関節、膝、腰。部位が多いだけに、すべてのリハビリを終えるには時間がかかりますが、着替えや歯磨きと同じように日課・ルーティーン化し、本人も家族も楽しくリハビリに取り組めるようにしたいものです。
なお、関節リハビリには、患者の状態に応じて介助を必要とするものと、自力でできるものとがあります。いずれの場合でも、安全を優先し「ゆっくりと行なう」を基本にしてください。