くも膜下出血など脳血管障害と深く関係している
嚥下障害とは、脳組織の一部がダメージを受けることにより摂食機能が低下してしまう状態のこと。原因として挙げられるのが脳梗塞やくも膜下出血などの脳血管障害です。 その名の通り「嚥下」機能に障害が起きることを言うのですが、嚥下とは口に含んだ食べ物を飲み込むまでの流れのこと。摂食嚥下障害が起きると、普段、誰もが無意識のうちに行っているこの動作がうまくできなくなります。
摂食嚥下障害の原因
摂食嚥下障害の原因には脳梗塞やくも膜下出血などの脳血管障害があります。脳組織の一部がダメージを受けてしまうことで、摂食機能が低下してしまうのです。
摂食嚥下のメカニズム
普段行われている摂食嚥下は次の5段階に分けられます。このうち、どこかがうまくいかなくなってしまうと嚥下障害に繋がるのです。
嚥下障害の分類
先述した第一期から第五期までのうちのどこかで問題が起きると嚥下障害となります。例えば、舌筋が麻痺した場合、口腔内に食べ物が留まりやすい状態になるのですが、これも嚥下障害です。咽頭筋に麻痺が生じた場合もうまく食べ物を食道内に運ぶことができず、摂食嚥下障害になってしまいます。
治療を行う場合、摂食嚥下の中でもどこに問題が起きているのかを診断し、最適な治療を行うことが重要です。重症度も人によって異なるため、そういったものも総合的に診断して食事の取り方や治療法などを検討していくことになります。
嚥下障害の重症度
5つの段階についてご紹介しましたが、嚥下障害が発生している場合、どこか一つの段階でだけ問題があるというケースは少ないのが特徴です。多くの方が複数の段階で少なからず障害があり、それらが組み合わされて嚥下障害になっています。評価をする際には一つの段階だけでなく、各期について確認しなければなりません。
また、重症度に関しては、1999年に「摂食・嚥下障害の臨床的病態重症度に関する分類」が考案されており、以下の項目がそれにあたります。(※1)これは、特に摂食・嚥下に問題がない段階を「7 正常範囲」とし、全7段階で評価をしています。
ここからもわかる通り、状態の悪化を判断する一つのポイントになるのが誤嚥です。正常な状態であれば喉頭蓋と呼ばれる部分が喉頭を塞ぐことにより誤嚥を防ぐことができるのですが、嚥下障害が発生するとこれがうまくできなくなることがあります。
唾液も誤嚥するようなレベルになると外科的処置が必要です。 外科的処置には、局所麻酔で行えるものの完全に誤嚥を防止できない気管切開術のほか、完全に誤嚥を防止できるものの声が出なくなる喉頭全摘術があります。状況に応じて選択できる方法も変わってくるため、担当医と相談しながら検討することになるでしょう。(※2)
リハビリ方法は?
具体的なリハビリ方法は担当医と相談しながら決めていくことになります。一般的には間接訓練と直接訓練の2種類が行われることになるでしょう。どちらの訓練を行うことになるのかはそれぞれの状態に応じて異なります。様々な訓練を組み合わせて行うこともありますし、医師や言語聴覚士、管理栄養士などがチームでアプローチしてその人にとって最適な治療法を検討することになるのです。
食べ物を使わずに行う訓練です。舌のマーサージなどを行い、嚥下反射を誘発していきます。訓練の中で喉の開きが悪いと判断された場合、喉の奥をストレッチする目的のバルーン法を行うことも多いです。
食べ物を使った訓練です。やわらかいものから始め、状態が改善すれば徐々に通常の食事に近づけていく方法となります。
介護での注意点は?
訓練を行う上で、家族の協力も欠かせません。そのため、家族も家で行う介助法などを教わることになるのです。介護する際に注意しなければならないのが、ただ単に機能回復の一点のみに集中するのではなく、栄養状態にも気を使うということ。
摂食嚥下障害はくも膜下出血の後遺症として現れることもあるのですが、くも膜下出血や脳卒中といった脳血管障害後には低栄養状態になることもあります。もし、エネルギーが不足した場合にはそれによって嚥下障害が悪化する可能性もあるため、介護する方も介護を受ける方が十分なエネルギーや水分を取れるように見ていてあげなければなりません。
摂食嚥下障害が起きるとただでさえ食べ物や飲み物を摂取しにくい状態になるため、栄養素のことまで頭が回らないこともあるでしょう。ですが、どのような栄養素を摂取できているのか、何を摂取できていないのかまで考えてサポートすることが重要です。
訓練を行ってからどれくらいで状態が改善していくのかについては個人差があります。そのため、他の患者さんに比べて回復が遅かったとしてもイライラせず、個人のペースを尊重して根気よくリハビリをサポートしましょう。 訓練がうまくいかないと患者さんも落ち込んだり、イライラしてしまったりすることもあるかもしれません。しかし、患者さんの気持ちに寄り添いながら介護していくことが大切です