飲酒

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過度の飲酒がくも膜下出血のリスクを高める

くも膜下出血のガイドラインによれば、くも膜下出血の発症リスクを高める危険因子は「喫煙習慣」「高血圧」そして「過度の飲酒」。中でも過度の飲酒は最も危険なリスク要因です。発症予防、再発予防のためにも知っておきたい、お酒とくも膜下出血の関係について解説します。

くも膜下出血のリスクを
飲酒が高めるって本当?

1日ジョッキビール3杯でくも膜下出血のリスクは4.3倍に

くも膜下出血の発症リスクと飲酒の関係を示す研究は、数多く行われています。こうした研究から、お酒の飲み過ぎが、くも膜下出血のリスクを高めることは明らかです。しかし一体どのくらいの量飲むと、どの程度リスクが上がるのでしょうか?

1999年に発表された論文『わが国におけるくも膜下出血の危険因子に関するコホート研究』によれば、1日平均69gのエタノールを摂取した男性は、くも膜下出血のリスクが4.3倍。エタノール69gは、ビールであれば大ジョッキ2.8杯、日本酒約3合、350mlの缶酎ハイ3.5本ほどに相当します。また、お酒に加えてタバコを吸う方や高血圧の方の場合、さらにリスクは高まります。お酒・タバコ・高血圧の3つのリスク要因が揃った場合、リスクはなんと17.5倍も高くなってしまうのです。

男子において,エタノール摂取量1日平均69g以上の大量飲酒は多変量を調整してもなお くも膜下出血の発生リスクは4.3倍となり, 喫煙と組み合わさることによって6.0倍,高血圧と組み合わさることで13.0倍となることが示された。さ らに,本 研 究 における男 子 におい て,喫煙,高血圧,大量飲酒の3項目が組み合わさった場合には,17.5倍もの高い相対危険度となることを示した。

参考文献:『わが国におけるくも膜下出血の危険因子に関するコホート研究』日衛誌,53,pp.587-595,1999[pdf]

くも膜下出血のガイドラインでも、1週間に150g以上の飲酒習慣のある方は、発症リスクが4.7倍と指摘されています。※1毎日飲まない方でも、1週間に日本酒を6〜7合飲む方は、その習慣を改めた方がいいでしょう。

※1参考文献:『脳卒中治療ガイドライン2009 | Ⅳ.クモ膜下出血』[pdf]

飲酒がくも膜下出血の
リスクを高める理由

お酒の飲み過ぎは肥満・脂肪肝・動脈硬化につながる

お酒は百薬の長と言われるのに、くも膜下出血のリスクを高めるなんて納得がいかない。お酒好きの方の中には、そう思う方もいるかもしれません。 では、なぜ過度の飲酒がくも膜下出血を引き起こす危険因子となるのか。その理由は次の通りです。

お酒を飲むとアルコールは胃や小腸で吸収され、肝臓に運ばれます。肝臓はアルコールを解毒させ、毒素を尿とともに排出させます。適度な飲酒は、肝臓のこうした解毒作用に過剰な負担をかけることなく、ストレス緩和など体にいい影響を与えてくれます。また、酒類に含まれているエタノールには、「血小板凝集抑制作用」と言って、血液を固まりにくくさせる性質があるとも言われており、脳梗塞のリスクを減らしてくれる効果も期待できます。 以下は飲酒による発症率に関する記述になります。

最近の研究によると、脳の血管が詰まる脳梗塞の発症率はときどき飲む人より習慣的に飲む人の方が明らかに低い。それに対し、脳内・クモ膜下で血管が破裂する出血性脳卒中の発症率はときどき飲む人より習慣的に飲む人の方が明らかに高い。これらの結果より、酒類に含まれるエタノールには血液を固まりにくくする性質(=血小板凝集抑制作用)があるため、脳梗塞を減らして出血性脳卒中を増やすものと推定されている

出典: 『飲酒と健康』体力科学,54,pp.279-286,2005[pdf]

しかしながら、飲酒は高血圧のリスクを高め、動脈硬化のリスクを高める血中尿酸値を増加させることもわかっています。 さらに、ビールなどカロリーの高いお酒は、飲みすぎることにより中性脂肪やコレステロール値が増加。高血脂症を引き起こします。血液の中の脂質が多くなれば、動脈硬化のリスクも当然高まります。 以下は厚生労働省のe-ヘルスネットにて説明されている、アルコールと高脂血症の関係についての記述です。

血液中の脂質が基準値を超えてしまうことを高脂血症といいます。アルコールが関係する高脂血症は中性脂肪(トリグリセリド)とHDLコレステロールの増加です。飲酒時の摂取エネルギーを減少させれば基準値にもどる可能性もありますが、アルコールの代謝そのものに伴う脂質代謝異常もからんでいる場合は、飲酒コントロールを行うことも必要です。

出典: 厚生労働省e-ヘルスねっと『飲酒|アルコールと高血脂症』

過度の飲酒による高血圧、飲酒によるカロリーの過剰摂取などにより肥満や脂肪肝が進展すれば、当然動脈硬化やくも膜下出血のリスクも高まってしまうのです。

過度な飲酒が原因!?
くも膜下出血体験談

過度な飲酒が長期間続くと、肝機能の低下や動脈硬化を起こし、くも膜下出血のリスクを高めます。くも膜下出血を経験された、高血圧、喫煙習慣がある方だと、症状を助長することに。適度であれば健康にいいので、くれぐれも過度な飲酒は控えましょう。

お酒とタバコが好きだった主人がくも膜下出血で帰らぬ人に…

夫はまだ40代前半で、お酒が大好きなヘビースモーカーでした。あの日も、仕事帰りにお酒をかなり飲んで、酔っぱらって戻ってきて、そのまま寝入ってしまいました。

夜中、大きな「いびき」に家族が気づきました。いつもと違ってとても苦しそうだったので呼びかけてみましたが、全く反応がありません。様子があまりにもおかしかったので、すぐに救急車を呼び、救急病院に搬送。

意識が回復した後、夫が尿意を催して「トイレに行きたい」と行ったので、回りにドクターや看護師もいなかったため、私の独断で連れて行ってしまいました。それが災いして、再び動脈瘤が破裂。そのまま昏睡状態に陥り、帰らぬ人となりました。

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飲酒されている方が今できるくも膜下出血予防

適量・減塩・低カロリーがキーワード

お酒は適量であれば動脈硬化を抑制し、心疾患や脳梗塞の予防にも繋げられます。1日の適量は体質や体格、年齢にもよりますが、壮年〜中年の男性の場合、日本酒1〜2合程度であれば適正量。

ただし高血圧や肥満、肝障害などがある方は、そうとは言い切れません。くも膜下出血に限って言えば、飲酒量が少量でもリスクは上昇すると言われています。以下は、飲酒量によるくも膜下出血のリスクについて説明しています。

ヒトの頸動脈の動脈硬化の程度を観察した別の研究では、軽度及び中程度の飲酒では頸動脈硬化のリスクは減少し(特に軽度飲酒で減少が著しかった)、一方、高度の飲酒(一日100g以上)により逆に動脈硬化のリスクが著しく増大していた。〜中略〜一方、クモ膜下出血のリスクは、脳内出血の場合と同様に軽度の飲酒によっても上昇し、飲酒量の増加とともに増大する

出典:『飲酒と動脈硬化性疾患』生活衛生,48(1),pp.387-395,2004

お酒は毎日ではなく時々飲むようにして、飲む場合にもカロリーの高いものや、味の濃いものはできるだけ避けるといいでしょう。

塩分を取り過ぎると、血液中のナトリウム濃度が高くなって高血圧になりますので、減塩を心がけましょう。また過度な飲酒から脂肪肝になると、血液中に悪玉コレステロールを増加します。

活性酸素によって酸化すると、血液がドロドロになるので、脂肪のコントロールや、抗酸化作用の高い食材やサプリメントなどを摂取するといいでしょう。