脳梗塞・脳出血との違い

病気の違いは明確、でもリスク要因は共通

「くも膜下出血」と良く似た病気として「脳梗塞」「脳出血」もあります。いずれも脳の血管にトラブルが起こっている状態で、この3つをまとめて「脳卒中」と呼びます。それぞれの病気について何が違うのかを、「場所」と「トラブルの状態」をポイントに解説しています。

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くも膜下出血・脳梗塞・脳出血それぞれの特徴と違い

くも膜下出血や、脳梗塞、脳出血はいずれも脳卒中と呼ばれる病気です。同じ脳の病気ですが、発症メカニズムや発症する場所により次のように区分されます。

脳卒中の種類

  • 「くも膜下出血」

    くも膜下出血は、脳の血管にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂し、出血する病気です。突然激しい頭痛や嘔吐、吐き気に襲われるのが特徴です。発症すればそのまま意識を失い、出血量が多ければ命を落とす危険が高まります。

  • 「脳梗塞」

    脳梗塞は、脳内の血管が詰まったり狭くなったりして血流が悪くなる病気です。血管が詰まることで引き起こされるといえばわかりやすいかもしれません。 脳梗塞も程度によって「脳血栓症」「脳塞栓症」「一過性脳虚血発作」に分けることができます。脳卒中患者の約4人に3人が、脳梗塞です。

  • 「脳出血」

    脳出血は、くも膜下出血と同じように、脳内の血管が破れて出血する病気です。くも膜下出血では脳の表面にある血管のこぶ(脳動脈瘤)が破裂するのに対して、脳出血では脳の中にある細い血管が破れて出血します。脳出血も頭痛や嘔吐などの症状が見られることがありますが、程度や症状はどこで出血した箇所によって異なります。片麻痺や感覚麻痺などが前兆として現れることがあります。

くも膜下出血は、脳の表面部分で起こる脳卒中。脳梗塞と脳出血は脳の中で起こる脳卒中です。いずれも高血圧や糖尿病、肥満、喫煙などがリスク因子としてあげられている病気です。

参照:日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン 2015 [追補2017]』[pdf]

脳梗塞との違い

脳梗塞が脳内の血管が「詰まる」ことで発症するのに対し、くも膜下出血は脳の表面の血管が「切れて出血する」ことで発症します。脳卒中患者の4分の3が脳梗塞とされており、めまいやふらつき、言語障害などから早期に発見しやすく、回復率も比較的良好とされています。一方でくも膜下出血は突然発症することが多く、初めの出血で約30%の人が死亡してしまう恐ろしい病気です。

そもそも脳梗塞とは

言語障害やしびれを感じたら脳梗塞の兆候かも?

脳梗塞は、脳内の血管の一部が詰まっている状態です。詰まった血管は血液が流れにくくなり、詰まった部位周辺の脳組織が圧迫されることによって、様々な感覚障害の症状が出ます。

  • 上手にしゃべれなくなる(ろれつが回らなくなる)
  • 言葉が出なくなる(失語)
  • 半身がしびれたり麻痺症状が出る
  • ものが二重に見えたり、片方の目が見えなくなる
  • 食べ物がうまく飲み込めなくなる
  • めまいや耳鳴り、震えなどが頻繁に起こる
  • ひどい頭痛や肩凝りがある

脳の詰まりが完全ではなく、「流れにくくなってしまっている」という状態であればこれらの症状が一時的で、そのうち回復する可能性もありますが、念のためおかしいと思ったら受診しましょう。脳の血管が完全に詰まってしまうと、周りの脳組織が壊死してしまうため、麻痺などの後遺症が残る危険性が高くなります。

脳梗塞の原因と対策

高血圧やメタボ対策など、生活習慣病対策がポイント

脳梗塞は、脳内の血管が「詰まる」ことによって発症する病気です。

その原因としては次の2つの要因が挙げられます。

  • 動脈硬化(血管の内側にコレステロールなどがたまり、硬くなっている状態)
  • 血液がドロドロになっている(血栓ができやすい状態)

これらの状態は、肥満や喫煙、大量の飲酒、運動不足、ストレスなど、日々の小さなことが積み重なって起こります。

脳梗塞が疑われる場合は、抗血小板剤などの投与によって血液をサラサラにする管理を行うほか、食生活の適正化や適度な運動、十分な睡眠などの生活習慣病対策も重要な治療の一つです。

3つのタイプ

脳梗塞には「ラクナ梗塞」「動脈硬化(アテローム硬化)」「心原性脳塞栓」の3つのタイプがあります。

  • 「ラクナ梗塞」

    脳梗塞の約半数を占めるタイプです。症状は軽いことが多いものの、何度も繰り返せば血管性認知症やパーキンソン病の原因にもなる脳梗塞です。脳内にある細い動脈が損傷を受け、脳の深い部分に小さい脳梗塞ができている状態を指します。

  • 「動脈硬化(アテローム硬化)」

    脳の中でも比較的大きい動脈がアテローム硬化で狭くなり、血栓ができたり、血栓で動脈が詰まったりしてしまう病気です。アテローム硬化によりできた血栓が剥がれて血管内を流れ、詰まることもありえます。アテローム硬化になった場合は、半身麻痺や感覚障害、失語症などの高次脳機能障害がみられることが多いと言われています。また、合併症として心筋梗塞などを引き起こすリスクがあります。

  • 「心原性脳塞栓」

    心臓にできた血栓が動脈内を流れて脳動脈を塞いでしまう病気です。心筋梗塞や心筋症などで血栓ができたことが原因のため「心原性」と呼ばれています。心臓病が原因で脳梗塞が引き起こされることは、意外と知らない方も多いかもしれません。

脳出血との違い

脳出血とくも膜下出血は、「脳の血管が破れて出血する」という点では同じですが、出血する箇所が異なります。くも膜下出血が脳の外側(脳の表面)の血管から出血するのに対し、脳出血は脳の内部にある血管が破れて出血が起こります。どちらも治療が遅れると出血が脳全体に広がって命にかかわることもあり、また助かっても半身麻痺や言語障害などが残るリスクが高い、恐ろしい病気です。

そもそも脳出血とは

脳出血と脳梗塞の症状はほぼ同じ!?

脳出血と脳梗塞は、血管が「破れる」「詰まる」という違いがありますが、脳内の血管に起こる重篤なトラブルという点では共通しています。この2つはくも膜下出血とは異なり、激しい頭痛があるということはあまりありません。梗塞や出血が脳のどの部分で起こっているかによって、症状が異なってきますが、総じて意識や感覚への障害が出やすいとされています。

  • 言語系の障害(言葉が出なくなる、ろれつが回らなくなるなど)
  • 意識系の障害(めまいやふらつき、運転などの仕方がわからなくなるなど)
  • 感覚系の障害(顔の両側が同じように動かせない、体の片側にしびれや麻痺)

脳出血の原因と対策

脳出血は高血圧との深い関係あり!?

脳出血を発症する最大の要因は高血圧と言われています。高血圧と言われている人の5割~7割近くの人が脳出血を発症しているというデータもあります。血圧が必要以上に高い状態が続くことで、脳内の血圧も高くなり、勢いで血管が破れやすくなってしまうのです。その他、野菜不足、過剰飲酒等の生活習慣、コレステロールが低すぎる、血液をサラサラにする薬(抗血小板剤や抗凝固剤)を常用している人は脳出血のリスクが高いと言われています。

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3つの病気に共通する注意点

脳卒中を防ぐポイントは…高血圧に気をつけること!

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血。それぞれ症状や発症部位に違いはありますが、共通しているのはなんといっても「高血圧」の人に発症リスクが高いということです。高血圧の状態が続くと、体中の血管が強い血流に日々さらされることで劣化し、破れやすくなったり、詰まりやすい状態になったりして脳卒中につながるのです。

国立がん研究センターの予防研究グループは、2013年に血圧や肥満度、性別、喫煙の有無などで脳卒中になる確率を簡単に算出できる方法を発表しています。この算出方法によれば、60歳で血圧が「収縮期血圧160〜179、拡張期血圧100〜109」の比較的高い値を示す男性の場合、10年間で脳卒中を発症する確率は8〜9パーセント。収縮期血圧が180以上、拡張期血圧が100以上の場合、さらにその確率は高まり10〜12パーセントになるとされています。肥満や喫煙などの要因が加われば、さらにリスクは高まります。興味のある方は自己チェックしてみてはいかがでしょうか?(※1)

サイレントキラーと呼ばれる高血圧は、動脈や血管の内皮細胞を傷つけます。すると、脂肪物質がたまって血管が分厚くなり、徐々に血管が硬くなる動脈硬化を引き起こします。動脈硬化の危険因子は高血圧の他にも高脂血症や喫煙、糖尿病、肥満、ストレスが挙げられます。高血圧や動脈硬化を放置していれば、脳卒中のリスクは高まる一方です。

脳卒中は、発症すると命の危険性もあり、また麻痺などの後遺症が残るリスクも高い深刻な病気です。少しでも発症する可能性を減らすためにも、正しい食生活や適度な運動、十分な睡眠を心がけ、血圧や血管に優しい生活を心がけることが大切です。

(※1)参照:予防研究グループ『10年間で脳卒中を発症する確率について -リスク因子による個人の脳卒中発症の予測システム-』