重症度のレベル

軽症から危篤状態まで7つのグレードがある

くも膜下出血には、脳内の動脈瘤の状態や出血の程度によって段階があります。くも膜下出血が疑われる場合、心電図やCTスキャンやMRI、腰椎穿刺等の検査を行った上で診断が確定されます。しかしその前に、医師が患者を診察する際、意識レベルや全身状態からくも膜下出血の重症度を判断する指標が主に3つ使用されており、以下がその指標になります。

  • ●Hunt and Hess分類(1968)
  • ●Hunt and kosnik’s scale (1974)
  • ●世界脳神経外科連合(WFNS)

どれも国際的に活用されている指標になります。ここでは指標の一つ、グレードを7つの段階に分けた、「Hunt and kosnik’s scale (1974)」基準表を元に、くも膜下出血のそれぞれのグレード、それぞれに考えられる治療法等について解説していきます。

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重症度を判断するグレード

Grade 0

「未破裂の動脈瘤」(破裂前の外科的治療が効果的)

脳動脈瘤は、脳内のくも膜下等に貼りめぐらされている太い血管の分岐(枝分かれ地点)などにできやすいとされています。分岐部の突き当たり部分が血流に押されて徐々に膨らんで行くことによって発生します。この場合、動脈瘤が小さい場合は経過観察を取ることもありますが、こぶの根元をクリップで止めてこぶを縮小させるクリッピング術や、マイクロカテーテルを使ったコイル塞栓術等を行うことで治療することができます。その他、高血圧治療や禁煙なども実施します。

Grade

「無症状か、最小限の頭痛および軽度の項部硬直をみる」

何となく違和感のある頭痛が数日続く、休んだり頭痛薬でも全く改善しないという場合にはくも膜下出血の初期症状のサインかもしれません。グレードⅠでは、最も初期に現れる軽度な症状で、出血はまだ起こっていませんが、動脈瘤が大きくなってきている可能性が考えられます。この場合もクリッピング術やコイル塞栓術によって動脈瘤の破裂を防ぐ治療が効果的で、重症に移行する前に治療しやすい段階と言えます。

Grade Ⅰa

「急性の髄膜あるいは脳症状をみないが、固定した神経学的失調のあるもの」

頭部CTスキャンやMRIでくも膜下への出血は認められないものの、物が二重に見える・片側のまぶたが開かない、または言語障害やしびれが起こっている状態です。大きくなった動脈瘤が脳神経や組織を圧迫している状態、あるいは少量の出血が起こっている可能性も考えられます。また、小さな動脈瘤が破裂した後の状態という場合もあります。いずれの場合でも早急な治療が必要となります。既に破裂してしまっている状態でも、再破裂による大量出血の危険性が高いため、すぐに開頭手術によるクリッピング術やカテーテルによる血管内治療が必要となります。

Grade

「中等度から強度の頭痛、項部硬直をみるが、脳神経麻痺以外の神経学的失調はみられない」

くも膜下出血に最も多いとされるのがこのグレード。脳動脈瘤が破裂してしまっている可能性が高いものの、くも膜下への出血はそれほど広がっていない状態です。激しい頭痛で意識がもうろうとすることもありますが、完全に意識を失うことはあまりありません。この状態になると、一刻も早い治療がその後の後遺症や生命の維持にも関わります。ただし開頭手術(クリッピング術)は発症から6時間以上経過し、48時間以内に行うのが原則とされています。

Grade

「傾眠状態、錯乱状態、または軽度の巣症状を示すもの」

脳動脈瘤が破裂し、くも膜下での出血がある程度広がっている状態です。突然の激しい頭痛で立っていることもできず、そのまま昏倒してしまうなど症状が現れ、一刻も早い病院への搬送を必要とします。血圧を下げる治療や、鎮静、鎮痛などの処置を行い、全身状態を見た上で、72時間以内に外科的な手術による再出血や脳内血管の萎縮の予防、水筒症の予防等を行います。

Grade

「昏迷状態で、中等度から重篤な片麻痺があり、早期除脳硬直および自律神経障害を伴うこともある」

動脈瘤の破裂から脳内にかなり出血が広がり、他の脳組織にまで影響が及んでいる状態です。脳本体が直接血液にさらされることによって血管が萎縮してしまうため、脳の様々な部分に酸素がいきわたらなくなり、マヒや言語障害などの様々な障害の危険性が考えられます。脳内の血圧降下の薬や心合併症に注意した全身循環動態の管理等が行われますが、グレードⅣ以上になると、かなり重症となり、命を取り留めても何らかの後遺症が残る可能性が高いとされています。

Grade

「深昏睡状態で除脳硬直を示し、危篤状態の様相を示すもの」

くも膜下出血の中でも最も重症のグレードです。脳動脈瘤の破裂などにより脳内に大量の出血が起こり、脳の働き自体が深刻なダメージを受けている状態が疑われます。「除脳硬直」とは、脳に重大な障害が起こっている際に見られる独特の体位のことで、この状態が見られると、回復しても重い障害が残る危険性が高いとされています。外科的手術が適応できないほどの状態でもあり、全身状態の管理や脳内血圧の降下薬等の投与が行われますが、残念ながらそのまま亡くなってしまう可能性も高いようです。

グレードが高いほど予後不良に

上記で説明したものが「Hunt and kosnik’s scale (1974)」の指標になりますが、各重症度分類でグレードが一致しないことも。とはいえ、グレードが高いほど予後不良(治療後の経過が良くないこと)という考え方が一般的です。また、高血圧・糖尿病・動脈硬化・慢性肺疾患といった重篤な全身性疾患や、著明血管攣縮がみられる場合、重症度を1つ悪いほうに移します。

参考文献:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2009」[pdf]